· パイロットの目  · 10 min read

座った瞬間にわかること

「失敗は成功のもと」 誰でも知っている言葉です。でも、本当にそうなのだろうかと、最近よく考えます。 失敗が成功につながる人と、何度失敗しても同じところにとどまり続ける人がいます。その違いは、能力の差ではないような気がしています。 失敗の受け取り方が、まるで違うのです。 今、ある場所でパイロットの方たちにアドバイスをする機会をいただいています。

「失敗は成功のもと」

誰でも知っている言葉です。でも、本当にそうなのだろうかと、最近よく考えます。

失敗が成功につながる人と、何度失敗しても同じところにとどまり続ける人がいます。その違いは、能力の差ではないような気がしています。

失敗の受け取り方が、まるで違うのです。


座った瞬間にわかる

今、ある場所でパイロットの方たちにアドバイスをする機会をいただいています。操縦の学び方や、判断の組み立て方のようなものをお伝えしています。

いろいろな方を見ていて、一つだけ確信を持って言えることがあります。

操縦席に座った瞬間に、「この人は大丈夫だな」とわかる人がいます。

何が違うのか。手先が器用とか、反応が速いとか、そういうことではありません。

気の配り方が違うような気がします。

伸びていく人は、座った瞬間から、自分の周囲に意識が向いています。計器の状態、外の景色、隣にいる人間の気配。操縦席に収まる前から、全体の空気を感じ取ろうとしている。

多分、この人たちは「できてもできなくても、それはそれ」という感覚をどこかに持っているのだと思います。うまくやることに縛られていないから、意識が自分の内側に閉じない。だから周りが見える。

一方で、なかなか伸びない人は、座った瞬間から「自分がやるべきこと」に意識が集中しています。うまくやりたい。ミスしたくない。その気持ちが強いほど、視野がどんどん狭くなっていく。

そして実際に操作が始まると、その違いはさらにはっきりします。

伸びていく人は、一つひとつの操作を「次に何をするか」「全体の中でこれはどこに位置するか」というつながりの中でやっています。だから、操作に統一感がある。流れがある。

伸びない人は、目の前の操作を一生懸命に再現しようとしている。その真剣さは伝わってきます。でも、一つの操作が終わると、次とのつながりが途切れてしまう。全体像が見えていないから、その場その場の対応になってしまうのです。


やり方を覚えるという落とし穴

「正しいやり方」を覚えること自体は、悪いことではありません。最初は誰だって真似から入ります。私もそうでした。

ただ、やり方を覚えることに固執してしまうと、そこから先に進めなくなるのかもしれません。

覚えたやり方がうまくいかなかったとき、「教わったやり方が悪かったのか」「状況が違ったからだ」と、原因を外に求めやすくなります。自分の中に取り込んで、自分のものにしていないから、うまくいかなかった理由も自分の中に見つけられない。

結果として、また別の「正しいやり方」を探しに行く。やり方は増えていくのに、「できる」にはならない。

うまく成長していく人は、同じ失敗をしても、まず自分の中に目を向けています。

「あの時、自分は何を見ていたのか」「なぜあの判断をしたのか」

他人のせいにしないとか、責任感が強いとか、そういう道徳的な話ではなくて、ただシンプルに、自分の操作と起きた結果のつながりを、自分なりに辿ろうとしている。

だから失敗が、次のフライトの燃料になるのだと思います。


コンピューターは正直です

こういう話をすると、「パイロットの世界は特殊だから」と思われるかもしれません。

でも、同じことは日常のいたるところで起きています。

恥ずかしい話ですが、私はITにまったく疎い人間でした。パソコンで何かうまくいかないとき、「このツール使えないな」とずっと思っていました。自分の入力が間違っているなんて、考えもしなかったのです。

結果が出ない。だから、もう一度同じことをやる。当然、同じ結果しか出てこない。よく見るとセミコロンとコロンが違っていたとか、本当に些細なことです。しかし自分が間違っているという意識もなく、同じことをまた繰り返す。何度も何度も。

コンピューターの世界は正確です。入力されたことに、正確に反応しているだけなのです。

うまくいかないのは、ツールのせいではなく、自分の入力が違っている。ただそれだけのことでした。

そこに気づいただけで、格段に成長できたと思います。

操縦も、仕事も、人間関係も、もしかしたら同じなのかもしれません。目の前に返ってきている結果は、自分が入力したものへの正確な反応に過ぎない。そう考えると、原因を外に探している限り、何度やり直しても同じ結果にしかたどり着かないのは当然のことです。


全部、自分のことだった

こんなことを書いていますが、私自身が「やり方を教える」ことに固執していた時期がありました。

正しいことを正しく伝えれば、相手は変わるはずだ。一生懸命にデータや理論を並べて、声を荒げたこともありました。でも、相手には何も届いていなかったのだと思います。

返ってきていた反応は、私の入力に対する正確な結果だったのでしょう。

今、レッスンの場で「座った瞬間にわかる」ようになったのは、自分がさんざん間違えてきた時間があるからです。何十年もかけて人を見て、自分もたくさん失敗して、それでやっと、少しだけ見えるようになってきたに過ぎません。

失敗は成功のもと。

それは多分、本当です。ただし、その失敗を自分のものとして受け取れたときだけ。

誰かのせいにした瞬間、失敗はただの不満になって、どこかに消えてしまうのかもしれません。

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