· パイロットの目  · 10 min read

「選択肢」の現れかた

前回の「選択肢」では、直感が導く答えはほぼ正しいという話をしました。迷ってぐずぐずすることが最悪で、選択肢が現れた瞬間に決断して動くことの大切さを書きました。 では、その選択肢はどのように現れるのか。 今回はその話をしてみたいと思います。 直感力で決定するというのは、あまりにも乱暴なやり方のように思うでしょうね。

前回の「選択肢」では、直感が導く答えはほぼ正しいという話をしました。迷ってぐずぐずすることが最悪で、選択肢が現れた瞬間に決断して動くことの大切さを書きました。

では、その選択肢はどのように現れるのか。

今回はその話をしてみたいと思います。


決断に固執しない柔軟さ

直感力で決定するというのは、あまりにも乱暴なやり方のように思うでしょうね。

でも、リーダーは決断して進む為にあります。

決断できないリーダーは存在価値がありません。

だからこそ、つねにフィードバックのサイクルを回し続けておく必要があります。操縦と同じです。決断して、動いて、ずれを感じたらすぐに修正舵を当てる。その繰り返しです。

あまり良くない決定をしてもすぐに良い方向に舵を切れる柔軟性が、大切になるのです。

ところが、一生懸命考えた決断ほど、固執しやすい傾向があります。

「これだけの情報を集めて、考えて出した結論なのだから、間違っているはずはない」と。

さっさと切り替えた方が、大抵うまくいきました。


今飛んでいる空が、最新の情報

瞬間に風は変わってしまうのです。

気象の変化がいい例です。

どんなに精緻な過去データを持っていても、今、飛んでいる空が最新の情報なのです。

過去のデータをいくら掘り返しても、目の前で変わりつつある風は止められません。

これからどうなるかを予測して、行動すること。それしかないのです。

その変化に対応する為には、ゴールとそれに至る全体像のイメージが明確に描けている必要があります。

例えば、その日の運航では、着陸(ゴール)から逆算して、大気の変化、雲の動き、風の変わり目――そうした全体像をイメージしながら、離陸からのプロセスを準備します。

そのイメージが明確であればあるほど、脳はイメージからのズレを瞬時に知らせてくれます。


言葉にならない「おとずれ」

ただ、その「おとずれ」は明確なものではありません。

何となく肌合いが違う。苦っぽい。何か合わない。何かしら違和感がある。

非常に微妙な感覚です。

長くフライトを続けてきて、脳は言葉を使っていないのではないかと思うようになりました。

操縦の感覚を人に伝えようとする時、「もっと強く」とか「タイミングを早く」とか言葉にしてみるのですが、うまく伝わった感覚がありません。言葉にした途端に、相手はそこに意識が集中してしまい、他のことができなくなってしまう場面を何度も見てきました。

ゴルフをやる方なら、この感覚がわかるかもしれません。

スイングの瞬間に「腰を切ろう」とか「腕を遅らせて」とか「肩をもっと回そう」とか――頭の中に言葉がよぎると、大抵うまくいかないのです。

身体は言葉より先に知っている。でも言葉が割り込んでくると、その感覚が消えてしまう。

言葉をつかって考えた途端に、脳が固くなるような気がしています。


埋もれてしまった感覚

我々はその微妙な感覚を、情報や言葉の中に埋もれさせて来たのではないだろうか?

最近、その疑問がどんどん大きくなっています。

「~しなければならない」「~するはずだ」「データではこうなっている」

人は、一生懸命にデータを調べて、考え抜いたことに価値をおきます。

そしてそこに固執してしまう。

これだけ調べたのだから正しいはずだと。

でも、飛行中の気象データも、会議で積み上げた資料も、それはすべて過去のものです。

今この瞬間に何が起きているのか、これからどう変わるのかは、その微かな違和感の方がよほど正確に教えてくれていることがあります。


昔はそれでよかった

昔は、じっくりデータを集めて、分析して、合議して決める。そのプロセスに意味があった時代は確かにあったと思います。時代の進む速度が今とはまるで違っていたから。

でも今は、半年前の常識があっさりと覆される時代です。

AIの進歩は目を見張るものがあります。

「こんなWebサイトを作りたい」と伝えれば、1時間もあれば、ほぼ見せられるようなものができてしまう。少し前なら何日もかかっていたことが、あっという間に形になる。

そういう時代に私たちは立っています。

AIが膨大なデータを一瞬で処理してくれる時代に、人間がデータ集めに奔走する意味は、どんどん薄くなっているような気がします。

過去の観念に縛られたまま決断を先延ばしにしていたら、その間にも世界は変わってしまっている。


違和感を拾い上げる力

むしろ、これからの時代に大切なのは、身体や感覚が発している微かな違和感――「何かおかしい」「ここじゃない」という信号を、きちんと拾い上げられるかどうかではないでしょうか。

その違和感がどこから来るのかを感じ取り、言葉にして、行動に移せること。

これは、私の感覚的な推察に過ぎません。

でも、30年の空の上で繰り返し体験してきたことでもあります。

データの処理はAIに任せられる。

けれど、「何かが違う」という微かな感覚を拾い上げて、そこから次の一歩を踏み出す力は、私たちの中にしかないのではないかと思っています。

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違和感を感じ取る力。それは、私たちが情報や常識の中に埋もれさせてきた「野生」のようなものかもしれません。

👉 [野生を忘れない — 70歳、まだ転んでいる。

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