· パイロットの目  · 12 min read

一生懸命やるほど、なぜかできなくなる理由

特にうまくいかなくなった時、初心に帰ってやり直そうとか思ったりして。 「もっと頑張らなきゃ」 「もっと注意深くやらなきゃ」 「次こそは失敗しないように」 そう思えば思うほど、どんどんうまくいかなくなる。

こんなことありませんか?

特にうまくいかなくなった時、初心に帰ってやり直そうとか思ったりして。

「もっと頑張らなきゃ」

「もっと注意深くやらなきゃ」

「次こそは失敗しないように」

そう思えば思うほど、どんどんうまくいかなくなる。

以前のブログに書きましたが、私は機長になってから、この罠にはまって、本気で「もうパイロット辞めよう」と思った時期があります。

本当にどん底の気分でした。

訓練時代は「ダメ出しの地獄」だった

航空大学校から機長になるまで、私が受けてきた訓練はすべて同じパターンでした。

「ここがダメだ」

「なぜできない」

「もっと注意しろ」

「何やってんだ」

ダメなところを指摘されて、修正される。その繰り返し。

教官たちは親切心でやってくれていたんでしょう。私の「欠点」を一つずつ直そうとしてくれていました。

でも、指摘されるたびに感じるのは、

「あ、やっぱり自分ってダメなんだ」

という感覚だけでした。

そりゃそうですよね。欠点を言われ続ければ、誰だってそうなる。脳ってそういう生き物ですから。

機長になった途端、地獄が始まった

機長になって1年目の審査。

長年刷り込まれた「ダメな自分」が出たのでしょう。

うまいところを見せようとして、すっ転んでしまい、

結果は「要フォロー」。

つまり「まだダメだから、指導機長と一緒に飛んで直しますね」ということです。

もう反省し、1からやり直そうと思いました。

それからの2〜3ヶ月は、本気で地獄でした。

私の運航スタイル、操作、判断、ちょっとした言葉にさえ、次々とダメ出しをされていきました。

最初は素直に言われたことを全て受け入れて、やり直そうと頑張りました。

すべての判断基準を、相手の基準に合わせようとしました。

文句を言われないために操作するようになっていきました。

一生懸命やればやるほど、おかしくなっていく

で、どうなったか。

どんどん自分の判断が信じられなくなっていったんです。

操縦も、だんだん自分のイメージ通りに行かなくなってきました。

「もうキャプテンはできないな〜」

本気でそう思うようになりました。

ここまで来ると、もう笑うしかない。

だって、一生懸命やればやるほど、急速にどんどんと悪くなってるんですよ。

こんなバカなことあります?

でも、あるんです。脳の仕組みがそうなってるから。

失敗を思い出すほど、失敗が脳に刻まれていく

ある時、気づいたんです。

失敗した操作を「次は成功させよう」と思うと、失敗が繰り返し記憶に残ってしまう。

指摘されたことを次はうまくやろうとする。

同じような操作でも、次は状況が変わっているため、また同じように指摘される。

次は気をつけようと思う。

すると、脳内で失敗のシーンが何度も再生される。

嫌な気分、落ち込んだ気分がどんどん刷り込まれていく。

視野が狭く、思考が止まり、息が浅い状態を再現していく。

そうやって失敗のイメージを繰り返すほど、脳に「失敗の記憶」が刻み込まれていく。

だから、実際のフライトでも、同じ失敗を繰り返してしまう。

つまり、失敗を思い出すほど、その失敗は強化される。

脳ってそういう生き物なんです。

結果的に、一生懸命反省している人ほど、失敗が固定化していく。

皮肉ですよね。

「できない自分」をイメージすると、本当にできなくなる

パイロットには「イメージフライト」という訓練があります。

実際に飛ぶ前に、頭の中で完璧なフライトをイメージする。

以前の私は、自分ができなかったことを「うまくやろう」としてイメージしていました。

すると、どうなるか。

失敗する自分、焦る自分、うまくいかない自分。

悪いイメージばっかり。

そのイメージを繰り返していると、本当にそうなっていきます。

赤ちゃんが歩けるようになるプロセスを考えてみてください。

転んでも転んでも、また立ち上がろうとする。

それは「歩ける自分」にリアリティを感じているからです。

誰も赤ちゃんに「また転んだね」「膝の使い方が悪いよ」なんて指摘しませんよね。

右の足を伸ばし、踵からついて、体重を前に移しなんてことを言ったら、多分一生歩けなくなってしまうのではないでしょうか?

でも大人になると、「できない自分」ばかりを見せられる。

だから、本当にできなくなっていく。

これも、脳の仕組みのせい。誰のせいでもない。

転機は、「やけのやんぱち」から始まった

「どうせダメになるんなら、もう言われたことなんて聞かずにやりたいようにやろう。そしたら、少なくとも自分の責任で失敗できる」

変ですけど、この吹っ切り方が良かったんですね。

そして、イメージの方法を根本から変えたんです。

失敗を修正しようとするのではなく、完璧にできている自分の状態を感じる。

イメージフライトの前に、まず理想的な自分の状態を作り上げます。

落ち着いた声のトーン

広い視野

すべての情報がスムーズに脳に入ってくる感覚

穏やかな呼吸

この状態を、まず身体で感じます。

そしてその状態のまま、完璧なフライトをイメージする。

手の感覚、風の音、計器の動き。

すべてが理想通りに進んでいるイメージ。

失敗のことは一切考えない。

ただ「完璧にできている自分」だけを感じる。

これを繰り返していくと、本当にそうなっていくんです。

自信って、自分を信じることなんですよ

自信って、何かができるようになることじゃないんです。

自分を信じること。

ただそれだけなんです。

でも、それが崩れると雪崩のようにダメになっていく。

逆に、それさえあれば、どんな状況でも乗り越えられる。

脳って、本当は単純なのかもしれません。

思った通りの自分を創造してくれる。

もし、誰かを指導する立場なら

あなた自身が、自分や、誰かに「ダメ出し」をしていないでしょうか?

できないことを指摘する前に、まずできたことに焦点を当ててみてください。

そして、できていないことについては、

「何があなたをそうさせたのか?」

「どんな状況がそう考えさせたのか?」

本人から失敗を切り離してあげる。

失敗の原因を本人の中に求めると、「失敗した」という感情だけが残って、どんどん自分を追い詰めていきます。

素直で一生懸命な人ほど、そのスパイラルから抜け出せなくなる。

あなたは今、誰かに「ダメなところ」を指摘されて、できない自分にリアリティを感じていませんか?

それなら、思い出してください。

失敗を繰り返し思い出すほど、失敗は強化される。

理想の自分の状態だけをイメージし続ける。

完璧じゃなくていい。理想の自分。その状態だけを感じる。

脳はそれに応えてくれるような気がします。

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