· パイロットの目  · 13 min read

霞ヶ浦でのヘリコプター訓練

自衛隊の霞ヶ浦駐屯地業務隊、航空学校霞ヶ浦校に民間委託生として入校することになりました。同期は6名。それぞれ卒業後の就職先は決まっています。 私はというと、「絶対に角刈りなんかしないぞ」と意気込んで、わざわざパーマをかけて入校しました😅 ところが拍子抜け。髪型については一切言及されませんでした。

自衛隊への入校:パーマをかけた反骨精神

自衛隊の霞ヶ浦駐屯地業務隊、航空学校霞ヶ浦校に民間委託生として入校することになりました。同期は6名。それぞれ卒業後の就職先は決まっています。

私はというと、「絶対に角刈りなんかしないぞ」と意気込んで、わざわざパーマをかけて入校しました😅

ところが拍子抜け。髪型については一切言及されませんでした。「髪の毛を短くしろ」なんて指導は全くなかったのです。

自衛隊生活の始まり

でも、入校すると全てが自衛隊の生活でした。

朝6時に起床ラッパで起きます。すぐに飛び起きて着替え、ベッドをきれいに整頓し、校舎の前に整列。校舎の周りを掛け声をかけながら1周走ります。

部屋に帰って制服に着替え、磨き上げたブーツを履いて朝食へ。宿舎から校舎までの移動も常に整列し、駆け足で移動です。

夜は9時就寝まで何もやることがないので、筋トレしたり走り回ったり。おかげで、めちゃめちゃ筋肉質になって痩せました。

自衛隊の食事は充実していて、なんとパイロットは一般隊員より1品多くもらえました。それでも痩せたということは、相当運動していたのでしょう。

髪の毛もパーマなんてかけていると、激しい運動で動きづらいし、汗をかいて面倒になってきました。結局、自分からスポーツ刈りにしてしまいました😅

素晴らしい同期と紳士的な教官たち

同期の6人は、みんな真面目で優しく、気遣いのできる人ばかりでした。航空大学校の同期も和気藹々としていましたが、ここでは人数が少ない分、より密な関係になりました。

教官もとても紳士的で、威圧的なところが一つもありません。あの航空大学校での体験があったので、最初は「いつ怒鳴られるんだろう」とビクビクしていましたが、本当に丁寧に指導してくださいました。

チームワークを学ぶ多彩な活動

操縦訓練だけではなく、まずみんなで操縦ジャンパーにつけるワッペンを作ります。デザインから刺繍・縫製依頼、費用に関してもみんなで決めました。

また、歓迎会などの宴会の段取りもやらされます。会場の予約、上官たちへの案内、宴会の酒・食事の手配—全て6人で話し合って決めさせられます。席次も重要な課題でした。誰をどこに座らせるかで、えらく悩んだものです。教官も含めた旅行の計画まで。

今思えば、チームの結束やコミュニケーション、そして社会性を育てる訓練だったのだと思います。よく考えられた訓練期間でした。

夜中に非常呼集もあります。突然のサイレンで起こされ、ベッドを整頓してから部屋の前に整列して点呼を受けました。ベッドの点検もされるのです。

土曜日の小さな楽しみ

きっちりとした日常から、唯一、土曜日の外出が許されました。正門の前の居酒屋で、昭和演歌を聴きながら同期とホッピーを飲むのが、私たちの唯一の楽しみでした。

真面目で優しい同期たち6人が、小さなテーブルを囲んで演歌を聞きながら語り合う—今思えば、とても贅沢な時間だったなと思います。

ホバリング:のたうち回る機体との格闘

ヘリコプター訓練は、まずホバリングから始まります。1mくらいの高さで一点に静止する訓練です。これができなければ、ヘリコプターは操縦できません。

教官がやるとピタッと止まっているのですが、私に「You have control」と言われて交代した途端、機体がのたうち回るように暴れまくります。まるで生き物のように左右前後に振り回され、なかなか止めることができないのです。

教官は言います。

「傾く前に直せ。傾くから動くんだろ!」

最初は「傾く前に傾くことが分かるわけないだろ」と思っていました。

ところが不思議なことに、だんだん動きが収束して、傾く前に直せるようになってきます。操縦桿も本当に小さな動きで一点にとどまることができるようになってくるから不思議ですね。

オートローテーション:急降下からの奇跡の着陸

次の関門が、オートローテーションという科目です。

飛行中にエンジンが止まったという想定で、メインローター・システムがエンジンから切り離され、ローターブレードがローターを下から上に通る空気流のみによって駆動されながら降下します。まさに急降下です。降下角は20度くらい—かなりの角度で落ちていきます。

そして接地する5mくらい手前の上空で、ローターの迎角を大きくして降下率を下げて、ふわっと接地するのです。

ものすごい速度と角度で降下して、一瞬の判断で適切な高度で機首を上げる—めちゃくちゃ難しいですが、これも何回もやっているうちにできてくるのですね。

固定翼機とヘリコプターの違い

固定翼の飛行機は自動車のような感じで、ヘリコプターは自転車のような感じ。自由自在に動くという感覚です。

航空機の安全思想:常に最悪を想定

航空機は、常に落ちることを前提に考えられています。

単発機:エンジンが止まった時、滑空できる範囲で安全な着陸ができる空き地を探す訓練

双発機:1つのエンジンが止まった時の訓練

ヘリコプター:オートローテーションの訓練

機材のシステムも常にフェイルセーフを2重3重に考えられ、構造の強度も最低1.5倍の安全率を持って設計されています。

現代の「空飛ぶ車」への期待と課題

今の空飛ぶ車やマルチコプターは、軽い機体には有利な方式だと思います。しかし、重くなればなるほど問題が出てくるような気がします。

昆虫と鳥、飛行機の関係と同じで、根本的な方式を変えないと効率が悪くなるのではないでしょうか。航空機としての基本概念をどう適用していくかが、今後の大きな課題だと感じています。

そして、どんな新しい技術が生まれても、航空に携わる人は常に最悪な事態に備える癖がついているような気がします。これは霞ヶ浦での訓練でも強く感じたことでした。

霞ヶ浦で学んだこと

この訓練期間で学んだのは、ヘリコプターの操縦技術だけではありませんでした。

「傾く前に直せ」という教えは、その後の人生でも大きな教訓となりました。問題が大きくなる前に、小さな変化を感じ取って修正する—これは飛行だけでなく、仕事や人間関係でも同じです。

パーマをかけて反骨精神を示そうとした私でしたが、結果的には規律ある生活の中で、多くの大切なことを学んだ貴重な期間でした。

考えてみると、規則で「こうしろ」と言われても変わらないものです。でも、その環境で実際に生活していると、自然にその場に合った行動をとるようになる。私の髪型の変化がまさにそれでした。

規則や言葉で言われても変わらない。目的を達成するために行動することで、効率の良い適切な行動をとるようになる。社会や目的が変われば、行動も変わる—そういうことなのだと思います。

次回は、ヘリコプターの免許を取得した後、実際の現場で待っていた新たな試練についてお話しします。


この記事についてのご質問やご感想がございましたら、お気軽にコメントでお聞かせください。「傾く前に直せ」という教えに共感された方のお話もお聞きしたいです。

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