· パイロットの目  · 7 min read

ミスはリーダーが引き起こす

航空機のような速い乗り物では、判断のタイミングがすべてを左右します。 「あれ、なんでここでこのオーダーが来ないの?」 「俺、何か間違ってる?」 そんな不安が頭をよぎった瞬間、チームのリズムは崩れ始めます。必要のない方向にエネルギーを使ってしまい、フォローワーの方もリズムがおかしくなってくる。

航空機のような速い乗り物では、判断のタイミングがすべてを左右します。

「あれ、なんでここでこのオーダーが来ないの?」 「俺、何か間違ってる?」

そんな不安が頭をよぎった瞬間、チームのリズムは崩れ始めます。必要のない方向にエネルギーを使ってしまい、フォローワーの方もリズムがおかしくなってくる。そうなると、ミスは必然的に起きやすくなるものです。

誰の責任なのか

ミスが発生すると、日本では「責任感がない」「いい加減だった」「注意力が足りない」「決められたことを守っていない」と、本人を責め立てる傾向が強いように感じます。

でも、本当にそうでしょうか?

ある実験の話をさせてください。

HUD(ヘッドアップディスプレイ)という装置があります。ジェット戦闘機で使われている、パイロットの目の前に計器の情報を映し出す装置です。外の景色を見ながら、同時に計器の状況も把握できる—画期的な技術として注目されました。

この装置の実験が行われたとき、驚くべき結果が出ました。

ベテランクルーの半分が、滑走路に侵入した機体を見逃して、そのまま着陸しようとしたんです。

なぜこんなことが起きたのか。

彼らはマニュアルに決められた操作や、コールアウトに集中していました。計器を見て、手順を確認して、声を出して。着陸許可が出た瞬間、「そこはもう安全な世界が待っている」という幻想を抱いてしまったのです。

「何が起きるかわからない」「大切なことは滑走路に何もないこと」—その意識が、すっぽりと抜け落ちてしまったんです。

マニュアルを守ることが目的になると、こういうことが起きてしまいます。

現代は特にマニュアル化が進んでいます。細かなことまで規定され、それを守ることに必死になる。その結果、目の前で起きている変化—マニュアルの範囲を超えた状況の変化—を感じ取れなくなってしまう。

「責任感がない」と批判する人たちも、同じ状況に置かれれば、必ず同じミスを犯します。そこには必ず「ミスを誘発させた何か」があるからです。本人の資質の問題ではないんですね。

リーダーが振り返るべきこと

ミスが起きたとき、リーダーはまず自分に問いかけてみる必要があるのではないでしょうか。

無用なプレッシャーを与えていなかったか?

オーダーの仕方は適切だったか?

声のトーンや抑揚はどうだったか?

チーム全体の雰囲気をコントロールできていたか?

「ミスを発生させる環境」を自分が作っていなかったか?

マニュアルに縛られすぎて、状況の変化を感じ取れなくさせていなかったか?

私たちは飛行機の運航前、必ずクルー間でブリーフィングをします。

そのとき「むすっ」とした表情だったり、声が暗かったりすると、それだけでミスが起こる下地ができてしまうんです。相手の頭の中では「あれ、どうしちゃったんだろう?」「こんなこと言ったら怒られるかも?」そんな妄想が駆け巡り始めます。

権力には責任が伴う

絶対的な権力を持つリーダーほど、自分の姿勢や態度、声に責任を持つ必要があります。

相手にプレッシャーを与える自分の態度こそ反省すべきで、相手をののしったり、責任を追及したりして良い結果はあり得ません。

そしてこれは覚えておいてほしいのですが、同じことは必ず自分の身の回りでも起こります。

ミスをした側の心構え

もしあなたがミスをしてしまったら、決して自分を責めないでください。

大切なのは「何が自分をそうさせたのか」を客観的に分析することです。必ず、そうさせた「何か」があるんです。

あなたが悪いわけではありません。

自分を責めると、その時の感情が氷山のように大きくなって、どんどん萎縮してしまうだけです。

本当に大切なこと

私も長年パイロットとして飛んできましたが、チームのミスの多くは環境が作り出すものだと感じています。

マニュアルは大切です。でもマニュアルは手段であって、目的ではない。

本当に大切なのは、目の前の状況を感じ取り、本質を見極める余裕を持てる環境を作ること。

それこそが、リーダーの本当の仕事なのかもしれませんね。

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